22歳の誕生日
キッチンにて、俺は安らかな気持ちでコーヒーを淹れていた筈なのに、突然ブチ切れて自室に戻り扇風機を蹴り飛ばしてしまう。
「お前は自分の部屋に戻って、扇風機を蹴っ飛ばさないければならない、そうするべきだ。でなければ、お前はお前ではなくなる」
と俺を俯瞰する上位にある意思が言うからだ。その声に逆らうことはとても難しい、なぜならその声に対して疑問を唱える奴が誰もいないから。
淹れかけのコーヒーを置き去りにして、自室に戻る。ドアを開ける。俺の意思とは無関係に俺の左足は扇風機を豪快に蹴っ飛ばす。大きな音をたててバラバラになる扇風機。出血する左足。俺には暴力の才能がある。
産まれてくるべきではなかったのだ、と思った。人間の存在構造は苦しみで、肉体は魂を縛り付ける檻で、自分が自分であるという運命と苦痛、なにが誕生日だ。
こうして、俺はまた1つ歳を取った。